「うちの事業所で使っている生成AIは、匿名加工情報を扱っているから個人情報ではない」——そう説明されて、それ以上踏み込んで確認していない事業所は少なくありません。しかし匿名加工情報と仮名加工情報は、個人情報保護法上まったく別の位置づけを持つ概念であり、混同したまま生成AIを導入すると、思わぬところで法令上の要求を満たせていない、という事態になりかねません。
匿名加工情報と仮名加工情報、何が違うのか
まず整理したいのは、両者は「加工の程度」も「利用できる範囲」もまったく異なるということです。
| 項目 | 匿名加工情報 | 仮名加工情報 |
|---|---|---|
| 復元可能性 | 特定個人を再識別できないよう加工 | 他の情報と照合すれば再識別できる場合がある |
| 第三者提供 | 一定の公表等を条件に可能 | 原則不可(本人同意が別途必要な場面が多い) |
| 本人への説明義務 | 加工方法等の公表が必要 | 内部利用が前提のため公表要件は異なる |
| 想定される用途 | 統計分析、外部提供を伴う研究等 | 社内での分析・AI活用など内部利用中心 |
生成AIサービスに投入するデータを検討する際、「加工したから安全」という発想ではなく、「どちらの加工の建付けで、誰が、どの範囲で使うのか」を具体的に詰める必要があります。
仮名加工情報は「社内で使う分には比較的柔軟」に見えますが、生成AIベンダーのクラウドにデータを送信する行為が「第三者提供」に該当するかどうかは、契約形態(委託か提供か)によって解釈が変わります。ベンダーとの契約が「委託」の建付けになっているかを必ず確認しましょう。
事業所でありがちな誤解
- 「利用者名を伏せ字にしたから匿名加工情報だ」→ 単純なマスキングは匿名加工情報の加工基準を満たしていない可能性があります。
- 「仮名加工情報にすれば生成AIに自由に投入してよい」→ 内部利用が前提であり、外部のクラウドサービスへの送信が想定通りの扱いになるとは限りません。
- 「加工すれば個人情報保護法の対象外になる」→ 匿名加工情報・仮名加工情報はいずれも個人情報保護法上の管理対象であり、無条件に「対象外」になるわけではありません。
生成AI活用時に確認したい実務フロー
記録支援や要約作成に生成AIを使う場合、次のような順序で検討すると整理しやすくなります。
- 入力しようとしているデータに、氏名・生年月日・住所などの直接識別子が含まれていないか確認する
- 間接的に個人が特定され得る情報(症状の特異な組み合わせ、家族構成の詳細など)が残っていないか確認する
- 加工後のデータが匿名加工情報・仮名加工情報のどちらの定義に該当するかを整理する
- 該当する場合、公表義務や第三者提供制限など、その区分に応じた義務を洗い出す
- ベンダーとの契約書上、データの取り扱いがどう定義されているかを照合する
加工の適法性判断は個別事案ごとに異なり、事業所内の判断だけで完結させるのはリスクがあります。特に外部への情報提供を伴う場合は、顧問弁護士や個人情報保護の専門家に相談のうえ進めることが望ましいでしょう。
Q&A:現場からよくある質問
Q. 生成AIの回答に利用者の情報が含まれていないか、どう確認すればよいですか。
A. 出力内容を職員が必ず目視確認し、固有名詞や特定可能な情報が紛れ込んでいないかをチェックする運用を組み込むことが基本です。
Q. 匿名加工情報として扱えば、そもそも生成AIへの入力自体が不要になりますか。
A. 加工の手間や情報の劣化を考えると、そもそも個人情報を入力しない設計(例:定型フレーズのみを扱う、統計値のみを扱う)にできないか検討する方が現実的な場合もあります。
生成AIの導入を検討する事業所では、こうした加工情報の区分を正しく理解したうえで、自事業所の業務フローに落とし込むことが欠かせません。Hope Care AIでは、こうした個人情報保護の考え方を踏まえた機能設計を行っています。詳しくはセキュリティのページや機能紹介のページをご覧ください。
セキュリティのページで詳細をご確認いただけます。
監修
株式会社オルデンティアコーポレーション 福祉DXコンサルタント
福祉施設のDX・生成AI活用を専門に支援。本記事は現場の実務課題に基づき執筆・監修しています。