障がい福祉サービスの利用者には、医療機関や相談支援事業所、学校、就労先など、複数の機関が関わることが少なくありません。多職種連携では、それぞれの機関が持つ情報の粒度や専門用語の使い方が異なるため、情報共有がうまくいかないという課題がしばしば指摘されます。生成AIがこの橋渡し役として担える役割について考えます。
多職種連携でよく起きるすれ違い
医療機関からの情報は専門的な医学用語で記載されることが多く、福祉職員がそのまま理解するには負担が伴う場合があります。逆に福祉現場での生活状況に関する記録は、医療従事者にとって専門外の表現で書かれていることもあり、双方の情報がかみ合わないまま会議が進んでしまうケースも見られます。生成AIに双方の資料を要約させ、共通の言葉で整理し直す使い方は、こうしたすれ違いを緩和する一つの方法として考えられます。
サービス担当者会議での活用場面
サービス担当者会議では、限られた時間の中で多くの関係者から情報を集約し、支援方針を確認する必要があります。生成AIを使って事前に各機関からの情報を整理し、論点を絞った資料をたたき台として準備しておくことで、会議の進行がスムーズになる可能性があります。ただし、会議で扱う情報には機微な内容が含まれるため、資料の作成過程で情報が外部に漏れないよう、利用するツールの管理体制を確認しておくことが欠かせません。
専門用語の翻訳という役割
生成AIは、専門用語をより平易な言葉に言い換える作業を比較的得意とします。医療的な記述を家族にも分かりやすい表現に整えたり、逆に福祉現場の状況を医療従事者向けに簡潔にまとめたりする用途は、連携をスムーズにする実務的な使い方の一つです。ただし、専門用語の言い換えによってニュアンスが変わってしまう可能性もあるため、重要な判断に関わる内容は原文も併記しておく配慮が望まれます。こうした情報整理を支える機能は機能一覧で紹介しています。
最終判断は専門職が担うという原則
生成AIが情報を整理できたとしても、医学的な診断や支援方針の最終決定は、それぞれの専門職が責任を持って行うべき領域です。AIの整理した資料はあくまで会議や検討の土台であり、判断そのものを代替するものではないという認識を、関係機関の間であらかじめ共有しておくことが望まれます。
情報連携における管理体制の重要性
複数の機関をまたいで情報をやり取りする以上、どの範囲の情報を誰と共有するか、事前に利用者や家族の同意を得ておくことが前提になります。生成AIを使う場合も、入力する情報の範囲を必要最小限にとどめ、外部に漏れるリスクを抑える運用が欠かせません。ツール選定の際はセキュリティの内容を確認しておくとよいでしょう。
導入の進め方
多職種連携における生成AI活用は、事業所単独で完結する話ではなく、関係機関との調整も必要になります。まずは自事業所内の情報整理から始め、効果や課題を確認した上で、関係機関との情報共有の場に段階的に広げていくアプローチが現実的です。導入の流れについては導入までの流れを参照してください。
まとめ
多職種連携における生成AIの活用は、専門用語の言い換えや資料整理といった橋渡し役として位置づけることが現実的です。最終的な判断は各専門職が担うという原則を保ちながら、情報共有の負担を軽減する工夫として取り入れることが望まれます。
監修
株式会社オルデンティアコーポレーション 福祉DXコンサルタント
福祉施設のDX・生成AI活用を専門に支援。本記事は現場の実務課題に基づき執筆・監修しています。