サービス担当者会議、地域ケア会議、退院前カンファレンスなど、障がい福祉・介護の現場では多職種が集まる会議が頻繁に開催されます。会議自体は重要な情報共有の場である一方、議事録作成の負担が現場の悩みとして根強く残っています。1時間の会議に対して議事録作成に1時間以上かかる、という声も珍しくありません。
多職種連携における議事録の難しさ
多職種会議の議事録が難しい理由は、単に量が多いからだけではありません。
- 相談支援専門員、サービス管理責任者、医療職、行政担当者など、立場ごとに使う専門用語が異なる
- 発言の意図を正確に汲み取り、後から見ても誤解のない表現にする必要がある
- 個人情報や支援方針に関わる内容が多く、記録の正確性が特に問われる
- 会議終了後、複数の関係機関に同じ内容を異なるフォーマットで共有する必要がある場合がある
生成AIをどの工程で使うか
録音・メモからの文字起こし整理
会議中のメモや録音データ(利用にあたっては事前の同意取得が前提です)をもとに、発言内容を整理し、発言者ごとに要点をまとめる作業をAIに任せることができます。人が一言一句を書き起こす必要がなくなるため、会議中は「聞くこと」「進行すること」に集中しやすくなります。
議事録フォーマットへの変換
「検討事項」「決定事項」「今後の課題」「次回までのアクション」といった項目立てにAIが自動で振り分けることで、読み手にとって分かりやすい議事録になりやすくなります。
関係機関別のサマリー作成
同じ会議内容でも、行政向け・家族向け・事業所内共有用では求められる粒度が異なります。ベースとなる議事録から、宛先ごとに要約の粒度を変えたバージョンを作成することも可能です。
会議の冒頭で「本日の決定事項は最後に読み上げて確認する」というひと手間を入れておくと、AIによる議事録整理の精度も上がり、参加者間の認識齟齬も減らせます。
注意すべきポイント
多職種連携の記録は、支援方針そのものに直結するため、AIの生成物をそのまま確定版として使うのは避けるべきです。特に次のような点は人による確認が欠かせません。
発言のニュアンスをAIが要約する過程で、「検討する」と「決定した」のような重要な語感の違いが失われることがあります。特に支援方針や医療的判断に関わる部分は、担当者が原文と照合したうえで確定させてください。
効率化の前後比較
| 工程 | 従来 | AI活用後の目安 |
|---|---|---|
| 議事録初稿の作成 | 会議時間と同等〜1.5倍程度 | 会議時間の3〜5割程度に短縮される場合がある |
| 関係機関への共有資料作成 | 宛先ごとに個別作成 | ベース議事録から派生作成しやすくなる |
連携がスムーズになると何が変わるか
議事録作成の負担が減ることで、担当者は会議そのものの質、つまり「誰が何を発言し、何が決まったか」を意識した進行に時間を割けるようになります。多職種連携の本質は情報共有のスピードと正確さにあり、記録作業の効率化はその土台を支える手段の一つと言えます。
会議記録は「作って終わり」ではなく、次の支援に活かされてこそ意味を持ちます。AIによる効率化を、会議の質そのものを高める時間の再配分につなげていくことが、多職種連携をより実効的なものにする鍵になるでしょう。
監修
株式会社オルデンティアコーポレーション 福祉DXコンサルタント
福祉施設のDX・生成AI活用を専門に支援。本記事は現場の実務課題に基づき執筆・監修しています。