「個人情報保護の体制を整えなければいけないのは分かっているが、何から手をつければいいか分からない」――小規模な障がい福祉事業所からよく聞かれる声です。人員・予算が限られる中で、優先順位をつけて着実に体制を構築していく考え方を整理します。
優先度1: 最低限のルールを文書化する
まず着手すべきは、個人情報の取り扱いに関する基本的なルールを文書として残すことです。立派な規程集である必要はなく、「誰が」「どの情報を」「どこまで扱ってよいか」を簡潔にまとめるだけでも、体制の第一歩になります。生成AIを業務で使っている場合は、利用してよいツールと入力してよい情報の範囲もこの段階で明確にしておくべきです。
優先度2: アクセス権限の整理
次に取り組みたいのが、記録やシステムへのアクセス権限の整理です。全職員が全ての利用者情報にアクセスできる状態は、小規模事業所にありがちなリスクです。担当する利用者の情報にのみアクセスできるよう設定を見直すだけでも、情報漏えいのリスクを大きく下げられます。
小規模事業所では「全員が忙しく、情報共有を優先してアクセス権限を緩めにしてしまう」傾向があります。しかし、必要最小限の権限設定(いわゆる最小権限の原則)は、コストをかけずにできるリスク対策のひとつです。まずは無料・低コストで実現できる権限設定の見直しから始めることをおすすめします。
優先順位を考えるためのステップ表
| 優先度 | 取り組み内容 | かかるコスト感 |
|---|---|---|
| 1 | 基本ルールの文書化(個人情報の取扱い方針) | 低(職員の時間のみ) |
| 2 | アクセス権限の見直し | 低〜中(システム設定次第) |
| 3 | 生成AI・ICTツールの利用ルール整備 | 低(運用ルールの整備) |
| 4 | 職員研修の実施 | 中(時間・外部講師費用) |
| 5 | インシデント対応フローの整備 | 中(専門家への確認費用) |
| 6 | 専門家によるチェック・第三者評価 | 高(専門家費用) |
優先度3: 生成AI・ICTツールの利用ルール整備
小規模事業所では、職員が個人の判断で無料のAIツールを業務利用してしまうケースが少なくありません。まずは「業務で個人情報を含む内容を入力してよいツールはこれ」というリストを作り、それ以外のツールの業務利用を控えるよう周知するだけでも、大きなリスク低減になります。
- 利用を許可するAIツール・システムを明確にする
- 個人アカウントでの無許可利用を禁止する旨を周知する
- 入力してよい情報・入力してはいけない情報の例をリスト化する
優先度4: 職員研修
ルールを作っても、職員に周知され実践されなければ意味がありません。年に1〜2回程度、短時間でも良いので、個人情報保護に関する研修の機会を設けることが重要です。実際に起きた事例(公表事例やヒヤリハット)を題材にすることで、理解が深まりやすくなります。
優先度5: インシデント対応フローの整備
情報漏えいなどが発生した際、誰に報告し、どのように対応するかというフローをあらかじめ決めておくことで、いざという時の被害拡大を防げます。小規模事業所であっても、最低限の連絡体制(責任者への報告ルート)は整備しておくべきです。
「全部を一度に完璧にやろう」とすると、小規模事業所では負担が大きく続かないことが多いです。優先度の高いものから段階的に取り組み、できることから着実に積み重ねる姿勢が現実的です。
優先度6: 専門家によるチェック
体制がある程度整ってきた段階で、可能であれば社会保険労務士や弁護士など専門家によるチェックを受けることで、見落としている点を発見しやすくなります。予算的に難しい場合は、自治体や業界団体が提供する無料相談窓口を活用する方法もあります。
Hope Care AIのようなシステムを導入することで、アクセス権限管理や記録の一元化が実現しやすくなり、小規模事業所でも効率的に体制構築を進めることができます。
監修
株式会社オルデンティアコーポレーション 福祉DXコンサルタント
福祉施設のDX・生成AI活用を専門に支援。本記事は現場の実務課題に基づき執筆・監修しています。