生成AIの話題では利用者情報の取り扱いに注目が集まりがちですが、見落とされやすいのが職員自身の人事データです。シフト作成の相談、評価コメントの下書き、採用選考のメモ整理など、生成AIを人事業務に活用する事業所が増える中で、職員本人の個人情報保護という観点も同時に整理しておく必要があります。
人事領域で生成AIを使う場面の例
- シフト表作成における希望調整メモの要約
- 人事評価コメントの文章化・下書き作成
- 研修レポートの添削・フィードバック文の作成
- 採用面接メモの整理・要約
- 労務相談内容の記録整理
これらはいずれも、職員本人の評価・健康状態・家庭事情など、機微性の高い情報を含みうる業務です。利用者対応と同様の慎重さが必要になります。
人事データ特有のリスクと利用者データとの違い
| 観点 | 利用者データ | 職員の人事データ |
|---|---|---|
| 本人との力関係 | サービス利用契約に基づく関係 | 雇用契約に基づく指揮命令関係があり、同意の任意性が問題になりやすい |
| 含まれやすい機微情報 | 心身の状態、支援内容 | 健康診断結果、家族の介護状況、評価・懲戒に関する情報 |
| 閲覧できる範囲 | 支援に関わる職員に限定しやすい | 管理職・人事担当など限られた範囲だが、越権閲覧のリスクがある |
雇用関係にある職員から個人情報の利用について同意を得る場合、事業所側の立場が強いため「同意が自由意思に基づくものか」という点が個人情報保護法上、慎重に見られる場面があります。就業規則や労使協定の中で、生成AI活用の範囲をあらかじめ明確にしておくことが望ましいでしょう。
事業所内で整理しておきたいルール
- 人事評価コメントの下書きに生成AIを使う場合、誰の情報をどこまで入力してよいかの基準を作る
- 健康情報・傷病歴など要配慮個人情報に該当し得る情報は、生成AIへの入力対象から原則除外する
- 採用選考段階の応募者情報についても、同様の基準を適用する(応募者は職員以上に立場が弱いことに留意する)
- 生成AIの利用ログを人事担当者以外が閲覧できない権限設計にする
- 定期的に人事部門向けの研修で、入力してよい情報・避けるべき情報を再確認する
「評価コメントの文章を整えたい」というニーズ自体は自然なものです。生成AIには「勤怠が安定し、利用者対応も丁寧」といった抽象化された特徴のみを入力し、具体的な病名や家庭の事情は入力しない、という線引きを職員間で共有しておくと運用しやすくなります。
小規模事業所ほど注意したい落とし穴
職員数が少ない事業所では、人事担当と現場責任者が兼務しているケースが多く、「誰が」「どの立場で」情報を入力しているのかが曖昧になりがちです。役割と権限を明確にし、生成AIの利用アカウントも個人単位で管理することが、後から問題が起きた際の追跡可能性を確保するうえでも重要です。人事領域の個人情報保護に関する具体的な運用については、社会保険労務士など専門家に確認しながら整備することをおすすめします。
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監修
株式会社オルデンティアコーポレーション 福祉DXコンサルタント
福祉施設のDX・生成AI活用を専門に支援。本記事は現場の実務課題に基づき執筆・監修しています。