処遇改善加算の一本化とは|旧3加算との違いと3つの要件を解説

報酬改定・補助金処遇改善加算の一本化とは旧3加算との違いを基礎から整理この記事を読むメリット旧3加算が新加算Ⅰ〜Ⅳへどう再編されたかが図でわかる3つの算定要件と経過措置終了後の注意点を確認できる

令和6年度障害福祉サービス等報酬改定では、処遇改善に関わる3つの加算が「福祉・介護職員等処遇改善加算」として一本化されました。施行から時間が経ったいまも、「旧加算と何が違うのか」「経過措置はどうなったのか」を整理できていない事業所は少なくありません。本記事では、厚生労働省の公表資料に基づき、一本化の全体像と変更点、そして現在の実務で押さえるべきポイントを基礎から解説します。

処遇改善加算の一本化とは

一本化とは、令和6年度障害福祉サービス等報酬改定において、従来の「福祉・介護職員処遇改善加算」「福祉・介護職員等特定処遇改善加算」「福祉・介護職員等ベースアップ等支援加算」の3つを、令和6年6月から「福祉・介護職員等処遇改善加算」という1つの加算に再編したものです。厚生労働省は、令和6年度に2.5%、令和7年度に2.0%のベースアップへとつながるよう、一本化と加算率の引上げをあわせて行うと説明しています(出典: 厚生労働省「『処遇改善加算』の制度が一本化され、加算率が引き上がります」リーフレット、2024年)。

一本化前の3つの加算

旧3加算は、それぞれ配分のルールが異なっていました。

  • 処遇改善加算(Ⅰ〜Ⅲ):福祉・介護職員のみに配分する加算
  • 特定処遇改善加算(Ⅰ・Ⅱ):経験・技能のある職員に重点的に配分する加算
  • ベースアップ等支援加算:柔軟な配分が認められていた加算

3つの加算を併用する場合、事業所は加算ごとに異なる要件と配分ルールを管理しながら、計画書・実績報告書を作成する必要がありました。一本化後は配分ルールが統一され、福祉・介護職員への配分を基本に、経験・技能のある職員へ重点的に配分しつつ、事業所内での柔軟な配分が認められるようになっています。

3つの加算が1つに|一本化の全体像(令和6年6月施行)処遇改善加算Ⅰ〜Ⅲ福祉・介護職員のみに配分特定処遇改善加算Ⅰ・Ⅱ経験・技能ある職員に重点配分ベースアップ等支援加算柔軟な配分が可能福祉・介護職員等処遇改善加算新加算Ⅰ〜Ⅳ(加算率の異なる4段階)加算率を引上げ・配分ルールを統一し事業所内での柔軟な配分が可能に経過措置:新加算Ⅴ(1)〜(14)令和7年3月31日で終了 → Ⅰ〜Ⅳへ移行新加算に共通する3つの算定要件① キャリアパス要件② 月額賃金改善要件③ 職場環境等要件
図:旧3加算は新加算Ⅰ〜Ⅳに再編され、要件は3本柱に整理された

一本化で何が変わったか|4つの変更点

変更点1:区分が新加算Ⅰ〜Ⅳの4段階に再編

旧3加算の組み合わせで決まっていた加算の構造は、加算率の異なる新加算Ⅰ〜Ⅳの4区分に整理されました。加算率はサービス類型と区分ごとに定められているため、自事業所のサービスに適用される率は厚生労働省の告示・通知で確認する必要があります。上位区分ほど要件は増えますが、その分加算率も高くなる設計です。

変更点2:算定要件が3本柱に整理

新加算の算定要件は、①キャリアパス要件、②月額賃金改善要件、③職場環境等要件の3つに整理されました(出典: 厚生労働省リーフレット、2024年)。

  • キャリアパス要件:任用要件・賃金体系の整備、研修の実施等、昇給の仕組み、改善後の賃金額、福祉専門職員配置等加算の届出という5つの要素で構成され、取得する区分に応じて求められる範囲が変わります。詳しくはキャリアパス要件の見える化を解説した記事をご覧ください。
  • 月額賃金改善要件:加算による賃金改善を一時金に偏らせず、基本給や決まって毎月支払われる手当の改善に充てることを求める要件です。具体的な考え方は月額賃金改善要件を整理した記事で解説しています。
  • 職場環境等要件:入職促進や生産性向上などの区分から、取得区分に応じた数の取組を実施する要件です。上位区分では取組内容の公表も求められます。職場環境等要件とICT・生成AI活用の関連性の記事もあわせてご参照ください。

変更点3:職種間配分ルールの統一・柔軟化

旧制度では加算ごとに配分ルールが異なりましたが、新加算では職種間配分ルールが統一されました。福祉・介護職員への配分を基本とし、特に経験・技能のある職員に重点的に配分することとしつつ、事業所内での柔軟な配分が認められます(出典: 厚生労働省リーフレット、2024年)。これにより、たとえば旧制度で特定処遇改善加算の配分ルールが上位区分取得のネックになっていた事業所でも、移行しやすくなりました。

変更点4:加算率の引上げ

一本化は加算率の引上げとセットで行われました。厚生労働省は、報酬改定による加算措置の活用や賃上げ促進税制の活用等を組み合わせて、令和6年度に+2.5%、令和7年度に+2.0%のベースアップを実現するよう事業所に求めています(出典: 厚生労働省リーフレット、2024年)。

経過措置は終了|新加算Ⅴ(1)〜(14)とは何だったのか

一本化にあたっては、令和6年度中の激変緩和措置として新加算Ⅴ(1)〜(14)が設けられました。これは、旧3加算の取得状況に基づく加算率を維持したうえで、改定による加算率の引上げを受けられるようにした経過措置区分で、令和6年6月から令和6年度末までの期間限定の仕組みでした(出典: 厚生労働省リーフレット、2024年)。

この経過措置区分は令和6年度末(令和7年3月31日)をもって終了しており、以降は新加算Ⅰ〜Ⅳのいずれかの要件を満たして算定する必要があります(出典: 京都市「令和7年度 福祉・介護職員等処遇改善加算等計画書について」、2025年)。現在も自事業所がどの区分を算定しているか、上位区分との要件の差はどこかを、この機会に確認しておきましょう。

一本化後も制度は動いている|令和8年度の見直し

一本化は制度の終着点ではありません。令和8年度障害福祉サービス等報酬改定(改定率+1.84%)では、令和8年6月施行で処遇改善加算のさらなる見直しが行われました。主な内容は、①加算の対象を福祉・介護職員から障害福祉従事者へ拡大、②生産性向上や協働化に取り組む事業者に対する上乗せの加算区分の新設(加算Ⅰ・Ⅱの加算率の上乗せ)、③これまで対象外だった計画相談支援・地域相談支援・障害児相談支援への処遇改善加算の新設です(出典: 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」、2026年)。

このように処遇改善加算は毎年度のように見直しが続いているため、「一本化の基本構造」を理解したうえで、最新の告示・通知・Q&Aを厚生労働省のページで確認する運用が欠かせません。

実務で押さえる3つのチェックポイント

  • 取得区分の現在地を確認する:自事業所が新加算Ⅰ〜Ⅳのどれを算定しているか、上位区分に移行する場合に不足している要件は何かを一覧にする。
  • 就業規則・賃金規程などの文書を整える:キャリアパス要件は任用要件や賃金体系の「整備」を求めるため、規程類と実際の運用が一致しているかを点検する。
  • 計画書・実績報告書の期限管理を仕組み化する:提出漏れや記載誤りは返還リスクにつながるため、担当者個人の記憶に頼らず、年間スケジュールとして管理する。

よくある質問

Q. 一本化で加算による収入は減ったのですか?
A. 一本化は加算率の引上げとあわせて行われ、令和6年度中は経過措置(新加算Ⅴ)により旧3加算の取得状況に基づく加算率を維持したうえで引上げを受けられる仕組みでした。実際の加算額はサービス類型・取得区分・報酬総額によって変わるため、自事業所の適用加算率を告示・通知で確認してください。

Q. 経過措置の新加算Ⅴは今も算定できますか?
A. できません。新加算Ⅴ(1)〜(14)は令和6年度末(令和7年3月31日)で終了しており、以降は新加算Ⅰ〜Ⅳのいずれかの要件を満たして算定する必要があります。

Q. 一本化後、就業規則や賃金規程の見直しは必要ですか?
A. キャリアパス要件では職位・職責等に応じた任用要件と賃金体系の整備が、月額賃金改善要件では基本給や毎月の手当への配分が求められるため、規程類の点検が必要になる場合があります。取得したい区分の要件を確認したうえで、必要に応じて整備してください。

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監修

株式会社オルデンティアコーポレーション 福祉DXコンサルタント

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