「要配慮個人情報」という言葉は個人情報保護法に登場する用語ですが、実際の障がい福祉サービスの現場でどの情報が該当するのか、具体的にイメージできている職員は意外と多くありません。この記事では、定義の確認から始め、事業所で日常的に扱う情報を例に挙げながら整理していきます。
要配慮個人情報の定義(考え方の整理)
要配慮個人情報とは、本人に対する不当な差別や偏見その他の不利益が生じないよう、取得や第三者提供において特に配慮を要する個人情報として法律上位置づけられているものです。人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実などが代表例として挙げられ、これに準ずるものとして障がいの有無に関する情報も含まれると整理されるのが一般的です。取得の際に原則として本人の同意が必要になるなど、通常の個人情報よりも厳格な取り扱いが求められます。
障がい福祉サービスにおける具体例
- 障がい者手帳の種別・等級に関する情報
- 診断名・既往歴・服薬状況などの医療情報
- 精神科への通院歴、入院歴
- 虐待や犯罪被害の経験に関する記録
- 生活保護受給の有無(社会的身分に関連する情報として扱いに注意)
- 本人・家族の宗教的背景に関する情報(支援上必要な場合)
これらは支援計画やケース記録の中に自然な形で含まれていることが多く、「要配慮個人情報を扱っている」という意識が薄れがちな点に注意が必要です。
要配慮個人情報は取得時に原則として本人の同意が必要とされています。生成AIへの入力によって、当初想定していなかった第三者(AI提供事業者)に実質的に情報が渡る形になっていないか、あらためて確認することが重要です。
生成AIとの関係で特に注意すべき場面
日々の記録作成やケース会議の準備で生成AIを使う際、要配慮個人情報を含む文章をそのまま入力してしまうケースが起こり得ます。例えば「利用者の障がい特性を踏まえた声かけの工夫を考えたい」という相談自体は自然な業務ですが、その際に診断名や具体的な既往歴まで詳細に入力する必要が本当にあるかどうかは、一度立ち止まって検討する価値があります。多くの場合、「知的障がいがあり、聴覚からの情報より視覚的な情報の方が伝わりやすい」といった支援上必要な特性の記述までにとどめ、詳細な医学的診断名までは踏み込まない、という線引きが可能です。
要配慮個人情報とそれ以外の個人情報の違い(比較)
| 項目 | 通常の個人情報 | 要配慮個人情報 |
|---|---|---|
| 取得時の同意 | 利用目的の通知等で足りる場合が多い | 原則として本人の同意が必要 |
| 第三者提供 | オプトアウトによる提供が可能な場合あり | オプトアウトによる提供は認められない |
| 生成AI入力時の注意度 | 匿名化を基本とする | 入力の要否自体から慎重に検討 |
実務での運用ヒント
要配慮個人情報を扱う場面では、「匿名化すれば入力してよい」と単純に考えるのではなく、そもそも生成AIに入力する必要があるのかどうかを見極める姿勢が大切です。制度的な質問(「障がい福祉サービスの制度上の一般的な取り扱いを知りたい」等)であれば個別の利用者情報は不要なはずですし、個別具体の支援内容に関する相談であっても、要配慮個人情報にあたる部分は最小限にとどめる工夫ができないか、まず検討してみることをおすすめします。
要配慮個人情報の該当性判断は、個々の情報の内容や文脈によって変わることがあります。判断に迷う場合は、法人内の個人情報保護担当者や外部の専門家に確認しながら、事業所としての基準を作っていくことをおすすめします。
監修
株式会社オルデンティアコーポレーション 福祉DXコンサルタント
福祉施設のDX・生成AI活用を専門に支援。本記事は現場の実務課題に基づき執筆・監修しています。