送迎業務が終わった直後の事業所で、こんな光景を見たことはないでしょうか。運転していた職員が戻ってくるなり、記憶が新しいうちにと急いで送迎記録を書き、その合間に日中の支援日誌もまとめようとして、結局どちらも殴り書きのようなメモで終わってしまう。管理者が後で読み返しても「結局その日何があったのか」がわからず、加算算定の根拠として使うには心もとない――。生成AIは、この「時間がない中でどう質を保つか」という現場の悩みに具体的な解決策を提供します。
送迎記録・日誌作成にかかる時間の実態
多くの事業所では、送迎1回あたりの記録に5〜10分、1日の支援日誌の作成に利用者1人あたり10〜15分程度を要しているのが実情です。利用者数が20人を超える通所系事業所であれば、日誌だけで1日2〜3時間、月間では40〜60時間もの時間が記録作成に費やされている計算になります。この時間の多くは「何を書くか考える」ことに使われており、実際にタイピングする時間はごく一部です。
生成AIが効率化する3つの工程
生成AIの活用ポイントは、単に文章を書かせることではなく、記録作成の工程そのものを分解して支援する点にあります。
- 骨子作成:「〇時送迎、車内で落ち着いていた、家族から睡眠不足の申し送りあり」といった箇条書きのメモから、読みやすい文章に整形する
- 表現の標準化: 職員によって異なる言い回しを、事業所として統一したトーン・敬語表現に揃える
- 特記事項の抽出: 長文のメモの中から、加算算定や個別支援計画の見直しに関わる重要な情報を拾い出す
送迎記録は「誰が・いつ・どこで・どんな様子だったか」の4要素さえメモしておけば、生成AIが文章として整えてくれます。運転中や移動中はスマートフォンの音声メモに要点だけを吹き込み、事業所に戻ってからまとめて整形する運用にすると、送迎中の安全運転にも支障が出にくくなります。
導入前によくある誤解
「AIに記録を書かせる」と聞くと、事実と異なる内容を勝手に作文されるのではないかと不安に思う職員も少なくありません。実際には、生成AIはゼロから出来事を創作するのではなく、職員が入力したメモや音声を「整形」する役割に徹する使い方が基本です。誰が何を見て、何を書いたのかという責任の所在は、あくまで入力した職員にあります。この前提を職員研修の段階できちんと共有しておくことが、現場の抵抗感を減らす近道になります。
| 従来の記録作成 | 生成AI活用後 |
|---|---|
| 送迎後にゼロから文章を考える | 要点メモをAIが文章化 |
| 職員ごとに表現がばらつく | 事業所内でトーンを統一しやすい |
| 特記事項の見落としが起きやすい | 重要語句をAIが抽出しチェック促進 |
日誌作成での応用
支援日誌についても考え方は同様です。日中活動の様子、食事・排せつなどのバイタル的な記録、他利用者とのやり取りといった断片的な情報を、時系列に沿った読みやすい記録として再構成できます。特に新人職員にとっては「どこまで細かく書けばよいか」の基準がつかみにくいものですが、AIが生成した文章をたたき台にすることで、記録の粒度感を自然に学べるという副次的な効果も期待できます。
導入時に注意したい落とし穴
便利さの裏側で、いくつか気をつけたい点もあります。
生成された文章をそのまま提出する運用は避けましょう。必ず記録者本人が内容を確認し、事実と齟齬がないかを見た上で確定させるフローを組み込む必要があります。また、利用者の氏名や病歴などの個人情報を含む入力を行う場合は、事業所として利用するAIサービスのデータ取り扱い方針を事前に確認しておくことが欠かせません。
まずどこから始めるか
いきなり全職員・全利用者の記録をAI化しようとすると、かえって混乱を招きます。まずは送迎記録など比較的定型化しやすい業務から試し、職員の反応や記録の質を見ながら支援日誌へと対象を広げていくのが現実的な進め方です。Hope Care AIでは、こうした記録業務の負担軽減を目的とした機能を提供しています。詳しい機能内容は機能一覧をご覧ください。導入までの流れについては導入の流れのページで確認いただけます。
サービスの特長もあわせてご参照ください。記録業務の効率化がどのように現場の負担軽減につながるか、具体的にご紹介しています。
監修
株式会社オルデンティアコーポレーション 福祉DXコンサルタント
福祉施設のDX・生成AI活用を専門に支援。本記事は現場の実務課題に基づき執筆・監修しています。