障がい福祉・介護の現場は、その性質上「要配慮個人情報」を日常的に扱う業務です。利用者の障がい区分、病歴、服薬状況、心身の状態などはすべて要配慮個人情報に該当し得るため、生成AIを業務に取り入れる際には通常の個人情報以上に慎重な取扱いが求められます。本記事ではステップ形式で、生成AI導入時に確認すべき事項を順序立てて解説します。
要配慮個人情報とは何か(おさらい)
個人情報保護法第2条第3項では、要配慮個人情報を「人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するもの」と定義しています。障がいの有無や種別、既往歴、通院歴などはこれに含まれると考えられており、原則として本人(または代理人)の同意なく取得することはできません。
ステップ1:現状の業務フローで要配慮個人情報がどこに存在するかを洗い出す
まず着手すべきは、事業所内のどの業務で要配慮個人情報が発生しているかの棚卸しです。
- アセスメントシート・サービス等利用計画
- 介護記録・支援記録・ケース記録
- 医療機関との連絡文書、主治医意見書
- ヒヤリハット・事故報告書
- 職員間の申し送り、カンファレンス資料
ステップ2:生成AIをどの業務で使うか用途を限定する
すべての業務にAIを使うのではなく、要配慮個人情報の含有度が低い業務から着手するのが現実的です。例えば記録の「言い回しの整形」や「議事録の要約」であれば個人情報を伏せた形で依頼できますが、「利用者Aさんの支援方針を考えて」といった依頼は、本人の状態に関する情報を入力せざるを得ません。
「氏名を伏せれば匿名だから大丈夫」という考え方は危険です。生年月日、事業所名、障がいの詳細な状況などの組み合わせから個人が特定できてしまう場合、それは匿名化されているとはいえません。
ステップ3:同意取得のタイミングと方法を整理する
要配慮個人情報を生成AIに入力すること自体が、通常のシステム利用の範囲を超える「取得」や「利用」にあたると評価される可能性があるため、契約時の重要事項説明書や個人情報使用同意書に、生成AIを業務効率化のために利用する可能性がある旨を明記し、同意を得ておくことが望ましい対応です。すでに契約済みの利用者については、運営会議等で説明のうえ、追加の同意書取得を検討する事業所もあります。
ステップ4:入力してよい情報・避けたい情報の線引きをする
| 区分 | 具体例 |
|---|---|
| 避けたい入力 | 氏名+病名+症状の詳細、生年月日+障がい区分の組み合わせ |
| 工夫すれば入力可能 | 「利用者A」「30代男性」など匿名化・一般化した表現 |
| 問題になりにくい入力 | 既に完成した文章の言い回し修正、一般的な制度に関する質問 |
ステップ5:業務特化型システムの利用を検討する
汎用チャットAIに個別情報を都度入力するのではなく、あらかじめ介護・福祉業務向けに設計され、入力データの取扱いポリシーが明確なクラウドサービスを利用することで、同意取得や入力ルールの負担を軽減できます。Hope Care AIの機能一覧では、記録支援やアセスメント業務での生成AI活用がどのように設計されているかを確認できます。
要配慮個人情報の取得同意は「包括同意」だけに頼らず、生成AI利用の具体的な用途(記録作成支援、計画書のたたき台作成など)をできるだけ明示すると、後々のトラブルを避けやすくなります。
ステップ6:定期的な見直しの仕組みを作る
生成AIサービスは規約やデータ取扱い方針が随時更新されるため、導入して終わりではなく、半年〜1年に一度は利用規約やプライバシーポリシーの変更点を確認し、必要に応じて同意書や運用ルールを更新する体制を整えることが望ましいでしょう。最終的な法的判断については、社会保険労務士や弁護士など専門家に確認することをおすすめします。
制度面での事業所の対応について詳しく知りたい場合は制度解説ページもあわせてご覧ください。
監修
株式会社オルデンティアコーポレーション 福祉DXコンサルタント
福祉施設のDX・生成AI活用を専門に支援。本記事は現場の実務課題に基づき執筆・監修しています。