生成AI出力の誤りが記録に残った場合の訂正手順

生成AIによる文字起こしや要約は効率化に役立つ一方で、聞き取り誤りや事実と異なる要約が支援記録に紛れ込むリスクがあります。この記事では、誤りが記録に残ってしまった場合に、法人としてどう訂正し、どう説明できる形にしておくかを4段階で整理します。

訂正は「消す」のではなく「残す」

個人情報保護の観点から求められる対応

個人情報保護法は、本人から誤りを指摘された場合の訂正等の請求に対応する義務を事業者に課しています。記録の訂正では、誤った記載を単純に削除するのではなく、いつ・誰が・どのような理由で訂正したかを訂正履歴として残すことが基本です。これにより、後から記録を見た第三者や監査担当者に対しても、訂正の経緯を説明できます。

紙の記録であれば、誤った記載を二重線で消し訂正印を押すという運用が長く行われてきました。電子化された記録でも考え方は同じで、「訂正前の内容が分からなくなる」修正の仕方は避けるべきです。

誤りが記録に残った場合の4段階の訂正手順

1. 発見時の一次対応: 影響範囲を特定する

誤りに気づいたら、まずその内容がどの記録・どの帳票に転記されているかを洗い出します。AI要約から個別支援計画やモニタリング記録など複数の書類に転記されている場合、訂正が必要な範囲が広がるため、先に全体像を把握します。日々の記録から複数の帳票へ展開している事業所ほど、この洗い出しの手間は大きくなります。

2. 原本(音声・元データ)との突合

可能であれば、AI要約のもとになった録音データや元の記録と突合し、正しい内容を確定させます。原本が残っていない場合は、対応した職員の記憶と他の記録から事実を再構成し、その根拠も記載します。AI議事録の音声データの扱いで整理した保管ルールを事前に決めておくと、こうした突合作業がスムーズになります。

3. 訂正履歴を残した上での修正

記録システム上で、訂正前の内容・訂正後の内容・訂正日・訂正者・訂正理由をセットで残します。訂正機能が備わっていないシステムを使っている場合は、訂正内容を別途ログとして残す運用でも代替できますが、記録本体と紐づけて管理できる仕組みの方が、後から追跡しやすくなります。

4. 本人・家族への説明と再発防止策の記録

訂正内容が本人の支援方針に影響する場合は、本人または家族への説明を行い、その記録も残します。あわせて、なぜ誤りが生じたか(聞き取り環境、AIの誤変換パターンなど)を分析し、再発防止策を法人内で共有します。生成AI利用の社内点検を年1回にで紹介した定期点検の仕組みに、こうした訂正事例の振り返りを組み込むと、再発防止の実効性が高まります。

訂正フローを事前に決めておく意味

誤りが発生してから対応を考えるのではなく、あらかじめ訂正フローを法人内で決めておくことが望ましいと言えます。誰が一次対応をするか、原本との突合は誰が行うか、本人・家族への説明は誰が担うかを役割として明確にしておくことで、実際に誤りが発生した際の対応スピードが変わります。法人間で支援情報を共有する場合の整理と同様に、記録の取り扱いに関するルールは、発生時ではなく平時に決めておくことが有効です。

再発を防ぐための仕組み化

訂正対応を個別の事案として都度対応するだけでは、同じ種類の誤りが繰り返される可能性があります。誤りが生じたパターン(方言による聞き取りづらさ、専門用語の誤変換、複数人が同時に話す場面での混線など)を記録として蓄積し、定期的に振り返ることで、AIの利用方法そのものを改善できます。たとえば、聞き取りにくい環境での録音の質を上げる、専門用語のリストを事前にAIに与えておくといった対策は、蓄積された誤りのパターンから見えてくるものです。

訂正対応を「その場しのぎ」で終わらせず、次の誤りを防ぐための材料として法人内で共有する仕組みを持つことが、生成AI活用を長期的に安定させる鍵になります。

職員教育に組み込むという選択肢

訂正手順そのものを新人研修や年次研修に組み込むことも有効です。実際に起きた訂正事例(個人が特定されない形に加工したもの)をケーススタディとして扱い、発見から本人・家族への説明までの流れを職員間で疑似体験しておくことで、実際に誤りが発生した際の対応が滑らかになります。特に生成AIの活用が広がるほど、こうした訂正対応の経験値を組織として積み上げておくことの価値は増していきます。

よくある質問

Q. AIの誤りは誰の責任になりますか?
A. AIツールの出力であっても、記録として採用し保存する判断は事業所側が行っているため、内容の正確性を担保する責任は事業所にあります。出力を鵜呑みにせず、必ず確認する運用が前提です。

Q. 訂正の記録はどのくらいの期間保存すべきですか?
A. 訂正記録は元の記録と同じ保存期間(サービス種別ごとの法定保存期間)に準じて保存するのが基本です。訂正履歴だけを先に削除してしまうと、経緯の説明ができなくなります。

Q. 軽微な表記の誤りでも訂正履歴を残す必要がありますか?
A. 事実関係に影響しない誤字脱字レベルの修正まですべて履歴化する必要はありませんが、内容の意味が変わる訂正については、程度によらず履歴を残すことをおすすめします。

Hope Care AIは、AI生成部分と職員による確認・修正の履歴を分けて記録できる設計により、訂正が発生した際にも経緯を追える体制づくりを支援します。


Hope Care AIは、介護・障がい福祉・児童福祉の現場で日々発生する記録・資料作成をAIで支援するサービスです。本記事で紹介した仕組みも、Hope Care AIの記録データ連携機能でそのまま実現できます。導入前の資料請求・ご相談はこちらのお問い合わせフォームから承っております。

監修

株式会社オルデンティアコーポレーション 福祉DXコンサルタント

福祉施設のDX・生成AI活用を専門に支援。本記事は現場の実務課題に基づき執筆・監修しています。

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