利用者からの同意取得は、個人情報保護の実務の中でも「形だけになりがち」な業務のひとつです。同意書にサインをもらうこと自体が目的化してしまい、実際に何にどこまで同意しているのかが利用者・家族にも、時には職員自身にも曖昧なまま運用されているケースは少なくありません。生成AIの活用を始める事業所では、この同意取得プロセスをあらためて見直す良い機会と捉えることができます。
同意取得でつまずきやすい3つのポイント
- 目的の抽象化:「サービス向上のため」といった曖昧な表現で同意を取ってしまい、生成AIの利用がその範囲に含まれるのか判断がつかない。
- 取得タイミングのずれ:契約時に包括的な同意を取ったきり、新しいツールを導入した際に改めて説明・同意確認をしていない。
- 撤回の仕組みがない:同意した後に「やはり生成AIでの記録作成には情報を使ってほしくない」と利用者が考えた場合の撤回手続きが用意されていない。
生成AI活用を前提にした同意取得のステップ
- 利用目的を具体的に言語化する:「記録の下書き作成」「連絡帳の文章作成支援」など、生成AIを使う具体的な業務を挙げる
- 入力される情報の範囲を明示する:氏名を伏せた状態で使うのか、状態像を要約した文章として使うのかなど、実際の運用に即して説明する
- 委託先(生成AIベンダー)の存在を説明する:情報が外部のクラウドサービスを経由することを、専門用語を避けて分かりやすく伝える
- 同意しない場合の代替手段を用意する:生成AI活用に同意しない利用者にも、これまで通りのサービス提供ができる体制を整えておく
- 同意の記録を残す:口頭説明の内容、同意日、説明者を記録に残し、後から確認できるようにする
同意書の文言を細かくしすぎると、かえって利用者・家族に伝わりにくくなります。書面には要点を簡潔に記載し、詳細な説明は口頭やわかりやすい補足資料で補う「二段構え」の説明が現場では機能しやすい傾向にあります。
説明用トークの具体例
現場で実際に使える説明の一例を挙げます。
認知症や判断能力に配慮が必要な利用者への対応
本人の判断能力に不安がある場合、同意取得は家族・後見人等への説明とセットで検討する必要があります。この点は個人情報保護法だけでなく、成年後見制度や意思決定支援のガイドラインとも関わるため、事業所内の判断のみで進めず、必要に応じて専門家や自治体の窓口に相談することが望ましいでしょう。
「家族が同意したから本人の同意は不要」という判断は誤解を招きやすいポイントです。本人の意思決定を尊重する仕組みとして、可能な範囲で本人にも分かりやすい説明を行う努力が求められます。
Hope Care AIでは、こうした同意取得プロセスの見直しを支援する観点から、導入時の説明資料のご提供も行っています。導入の流れや機能紹介のページもご参照ください。
セキュリティのページで詳細をご確認いただけます。
監修
株式会社オルデンティアコーポレーション 福祉DXコンサルタント
福祉施設のDX・生成AI活用を専門に支援。本記事は現場の実務課題に基づき執筆・監修しています。