利用者アセスメントは、支援計画の土台となる重要な工程でありながら、聞き取り内容の整理や文書化に多くの時間を要する業務でもあります。特に初回アセスメントでは、生活歴・家族状況・心身の状態・本人の希望など多岐にわたる情報を扱うため、まとめる作業だけで数時間かかることも珍しくありません。ここでは生成AIをアセスメント業務に取り入れる際の効率化のポイントと、注意すべき点を整理します。
アセスメント業務のどこに時間がかかっているか
アセスメントにかかる時間を分解すると、おおよそ次のような内訳になることが多いと考えられます。
- 聞き取り(面談・観察)そのものにかかる時間
- 聞き取ったメモを整理し、項目ごとに分類する時間
- アセスメントシートの様式に沿って文章化する時間
- 関係者間で共有するための要約を作成する時間
このうち、生成AIが特に力を発揮しやすいのは「整理」「文章化」「要約」の工程です。聞き取りそのものは職員の対人スキルに依存する部分であり、AIが代替できる領域ではありません。
効率化のステップ
ステップ1:面談メモを構造化された形で残す
面談中は自由なメモで構わないものの、「本人の発言」「家族の発言」「職員の観察」を区別して記録しておくと、後の整理作業がスムーズになります。
ステップ2:AIにアセスメント項目への振り分けを依頼する
「心身の状況」「日常生活動作」「社会参加の状況」「本人の意向」といった項目に沿って、メモの内容を分類・文章化させます。
ステップ3:職員が事実確認と表現の調整を行う
特に「本人の意向」に関する記述は、本人の実際の言葉やニュアンスを尊重する必要があるため、AIによる要約が本人の意図を歪めていないか、慎重に確認する工程です。
本人の意向や希望に関する記述は、AIによる要約で「〜を望んでいる」と断定的に書き換えられることがあります。本人の発言をできるだけそのままの形で残す部分と、要約する部分を意識的に分けて扱うことが大切です。
アセスメントでAI活用が特に有効な場面・慎重を要する場面
| 場面 | AI活用の向き不向き |
|---|---|
| 生活状況や既往歴など客観的情報の整理 | 比較的活用しやすい |
| 本人・家族の意向や価値観の記述 | ニュアンスの保持に慎重な確認が必要 |
| 複数回のアセスメントの経時的な比較 | 変化の傾向把握の補助として活用しやすい |
| 支援方針の最終決定 | AIに委ねず、担当者・会議での判断が必須 |
過去のアセスメント記録をAIに横断的に読み込ませ、「前回と比べて変化した点」を抽出させると、経時的な変化に気づきやすくなり、支援計画の見直しの参考になります。
アセスメントの質を担保するために意識したいこと
効率化を進めるほど、聞き取りの「量」は確保しやすくなりますが、聞き取りの「質」、つまりどれだけ本人の本音や生活の実態に迫れたかは、職員の面談スキルに依存し続けます。生成AIが担うのはあくまで事後の整理・文章化の部分であり、面談そのものの質を高める工夫(傾聴の姿勢、質問の仕方など)は引き続き職員研修の重要なテーマであり続けます。
アセスメントの効率化は、事務作業の時間を減らし、その分を利用者本人と向き合う時間に充てるための手段です。文書化の負担が軽くなった分、聞き取りそのものに丁寧に時間をかけられるようになることこそが、生成AI活用の本来の価値だと言えるでしょう。
監修
株式会社オルデンティアコーポレーション 福祉DXコンサルタント
福祉施設のDX・生成AI活用を専門に支援。本記事は現場の実務課題に基づき執筆・監修しています。