障害者差別解消法に基づく「合理的配慮」の提供にあたっては、利用者一人ひとりの障がい特性や生活状況を詳しく把握する必要があります。しかしこの情報は個人情報保護法上の要配慮個人情報にも該当することが多く、「配慮のために必要な情報共有」と「個人情報保護の観点からの制限」の間でどうバランスを取るかは、多くの事業所が悩むポイントです。この記事ではこの関係を整理します。
合理的配慮の情報はなぜ機微になりやすいのか
合理的配慮を検討する際に把握する情報には、障がいの種類や程度、感覚過敏の有無、コミュニケーション方法の特性、服薬や通院の状況など、極めて個人的な内容が含まれます。これらは要配慮個人情報として、取得時に本人同意が原則必要とされる情報であり、かつ配慮を実現するために関係する職員間で共有しなければならないという、一見相反する要請が同時に存在します。
整理の考え方:目的の範囲内での共有
個人情報保護法上、取得した個人情報は「利用目的の範囲内」で利用することが原則です。合理的配慮のために取得した情報を、配慮の実現に必要な範囲(担当職員間の共有、シフト作成での考慮など)で使うことは、通常この範囲に含まれると考えられます。一方で、その情報を全く別の目的(たとえば広報用の事例紹介)に使う場合は、別途同意を得る必要が生じます。
- 配慮の実現に直接関わる職員には共有する
- 共有範囲は「知る必要がある人」に限定する(need to know の原則)
- 事例紹介や研修資料に使う場合は、匿名化するか改めて同意を得る
- 他機関(学校・医療機関など)との情報共有は、その都度目的を確認する
「配慮のためだから」という理由だけで、関係のない職員にまで詳細な障がい特性の情報を共有してしまうケースが見受けられます。共有範囲は業務上の必要性に応じて限定することが望ましいです。
生成AIを使う場面での注意点
近年は、合理的配慮の内容を記録・整理する際に生成AIを活用する事業所も出てきています。たとえば「利用者Aさんへの配慮内容をまとめて」とAIに指示する場合、障がい特性や生活状況といった要配慮個人情報がそのままプロンプトに含まれることになります。この場合も、前述のとおりAIサービスへの入力が第三者提供や委託に準じた扱いとなり得るため、通常の記録作成以上に慎重な判断が求められます。
| 場面 | 考え方 |
|---|---|
| 配慮内容の草案をAIに作らせる | 個人が特定される固有名詞を伏せ、特性のみを抽象化して入力する工夫が考えられる |
| 複数利用者の配慮事例を比較する | 他利用者の情報が混在しないよう、案件ごとに区切って処理する |
| 配慮内容を家族向けに説明する文書を作る | AIが作成した文案を必ず職員が確認し、事実と異なる記述がないか確認する |
合理的配慮の記録をAIで整理する際は、固有名詞をイニシャルや利用者番号に置き換えてから入力するだけでも、情報漏えいのリスクを大きく下げられます。ちょっとした手間ですが、習慣化する価値があります。
記録・共有の仕組みを整える
合理的配慮に関する情報は、日々の支援記録とは別に、アクセス権限を絞った形で管理することを検討する事業所もあります。Hope Care AIのようなツールを使う場合、機能一覧のページでアクセス権限の細かさや記録の分類機能を確認し、セキュリティのページで職員ごとの閲覧範囲設定について確認しておくと安心です。
本人・家族との対話を起点に
合理的配慮の情報をどこまで、誰と共有するかについては、最終的には本人や家族との対話を通じて確認していくことが基本になります。個人情報保護の観点から一律に制限するのではなく、「この情報を、この目的で、この範囲の職員と共有してよいか」を丁寧に確認しながら進める姿勢が、結果的に良質な配慮の実現にもつながります。
監修
株式会社オルデンティアコーポレーション 福祉DXコンサルタント
福祉施設のDX・生成AI活用を専門に支援。本記事は現場の実務課題に基づき執筆・監修しています。