「個人情報保護法」と「マイナンバー法(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)」は、どちらも個人に関する情報を扱う法律であるため、現場では混同されがちです。生成AIの活用を考えるうえでも、この二つの違いを整理しておくことは重要です。両者の違いを比較しながら解説します。
そもそも何が違うのか(基本の整理)
| 項目 | 個人情報保護法 | マイナンバー法 |
|---|---|---|
| 対象 | 個人情報全般 | マイナンバー(個人番号)とそれに紐づく特定個人情報 |
| 規制の厳格さ | 一般的な安全管理措置 | より厳格な取扱い制限(利用範囲の限定等) |
| 利用できる場面 | 特定していれば比較的柔軟 | 社会保障・税・災害対策等、法定の場面に限定 |
| 第三者提供 | 本人同意等により可能な場合がある | 原則として法定の場合以外は提供不可 |
福祉事業所でマイナンバーを扱う場面
福祉事業所では、職員の給与・社会保険手続きに関連してマイナンバーを取得・保管する場面があります。また、利用者側の手続き(各種給付に関する書類等)でマイナンバーの提示を求められることもあります。これらはいずれもマイナンバー法の厳格な規律のもとで扱う必要があり、通常の個人情報とは別建てで管理体制を整えることが求められます。
生成AIとの関係で混同しやすいポイント
- 「個人情報として匿名化したから大丈夫」という感覚のまま、マイナンバーを含む書類の内容を生成AIに読み込ませてしまう
- 給与関連の問い合わせ文書を生成AIで作成する際、マイナンバー自体は記載していなくても、関連する書類の画像やスキャンデータをアップロードしてしまう
- マイナンバーの利用範囲(法定事務)を超えて、生成AIによる分析やまとめ作業に使ってしまう
個人情報保護法の観点では「業務効率化のための利用」として整理できる場面でも、マイナンバー法の観点では、そもそも法定された利用範囲を超えているという別の問題が生じる可能性があります。この二つの法律は重なる部分もありますが、規律の趣旨が異なるため、片方の基準だけで判断するのは危険です。
マイナンバーそのものを生成AIに直接入力することは、原則として避けるべきです。給与・保険関連の書類を扱う場合、生成AIに読み込ませる前にマイナンバー部分を確実にマスキング・削除する運用を徹底してください。
実務での切り分け方
現場の職員が「これは個人情報保護法の話か、マイナンバー法の話か」を都度厳密に区別するのは難しいのが実情です。実務的には、「マイナンバーを含む可能性のある書類・データは、原則として生成AIに一切入力しない」というシンプルなルールにしておくことで、判断の負担を減らしつつリスクを避けることができます。
給与担当部門やバックオフィス業務を行う職員には、支援記録を扱う現場職員とは別に、マイナンバー法を意識した専用のルール・研修を用意しておくと、混同によるミスを防ぎやすくなります。
どちらの法律も「専門家への確認」が前提
個人情報保護法とマイナンバー法は、どちらも改正が行われることがあり、また具体的な事案への当てはめは専門的な判断を要します。特にマイナンバー法は違反時の罰則が個人情報保護法より重く設定されている部分もあるとされているため、給与関連システムや生成AIツールの選定・運用にあたっては、社会保険労務士や弁護士など専門家の意見も踏まえて体制を整えることをおすすめします。
二つの法律の違いを正しく理解しておくことは、生成AI活用の可否を判断する土台になります。「個人情報だから」「マイナンバーだから」と一括りにせず、扱う情報がどちらの規律に服するのかを意識する習慣を、事業所全体で共有していきましょう。
監修
株式会社オルデンティアコーポレーション 福祉DXコンサルタント
福祉施設のDX・生成AI活用を専門に支援。本記事は現場の実務課題に基づき執筆・監修しています。