コストや機能面から、海外の生成AI事業者が提供するサービスを業務に導入する障がい福祉・介護事業所は少なくありません。ChatGPTやその他の海外製生成AIツールは高機能で魅力的ですが、国内サービスにはない法的論点がいくつか存在します。この記事では、海外事業者のAIサービスを検討する際に押さえておきたい観点を整理します。
論点1:準拠法と紛争解決地
海外事業者との利用規約には、準拠法が事業者の本国法とされ、紛争が生じた場合の管轄裁判所も海外に指定されていることがあります。万が一トラブルが発生した際、日本の事業所が海外の裁判所で対応するのは現実的に難しく、実務上は「そもそもトラブルを起こさない運用」を徹底することが重要になります。
論点2:個人情報保護法の域外適用と越境移転
日本の個人情報保護法は、日本国内にいる本人の個人情報を取り扱う海外事業者にも一定の範囲で適用されます(域外適用)。とはいえ、実際に海外事業者が日本法の要求水準をどこまで満たしているかは、契約書や公表資料だけでは判断しづらいことが多いです。データの越境移転についても、別記事で扱っている論点と合わせて確認が必要です。
- データセンターの所在地とサブプロセッサの所在地
- 入力データの学習利用の可否とオプトアウトの方法
- データ削除請求への対応窓口が用意されているか
- 日本語での問い合わせ・サポート体制の有無
論点3:利用規約の頻繁な改定
海外の生成AIサービスは機能追加や事業方針の変化に伴い、利用規約やデータ取扱いポリシーを頻繁に改定する傾向があります。改定内容によっては、入力データの取り扱い方針そのものが変わることもあるため、契約後も定期的な確認が欠かせません。
論点4:無償プランと有償プランで扱いが異なることがある
| 項目 | 無償プランに多い傾向 | 有償プラン(法人向け)に多い傾向 |
|---|---|---|
| 入力データの学習利用 | デフォルトで利用される場合がある | 契約でオプトアウトされていることが多い |
| データ保存期間 | 明示されていないことがある | 契約書に明記されることが多い |
| サポート体制 | 限定的 | 専任窓口が用意される場合がある |
無償版と法人向け有償版では、個人情報の取り扱い方針が大きく異なることがあります。「使い慣れているから」という理由で無償版を業務利用するのではなく、法人向け契約への切り替えを検討する価値があります。
論点5:委託契約としての整理
海外の生成AI事業者を「業務委託先」として位置づける場合、日本の個人情報保護法が求める委託先の監督義務(安全管理措置の確認等)を、海外事業者に対してどう履行するかという課題が生じます。契約書の英文しか用意されていない場合も多く、内容を正確に理解するために翻訳を専門家に依頼することも検討に値します。
国内サービスという選択肢
これらの論点を一つひとつクリアしていくのは、特に小規模な事業所にとって大きな負担になります。そのため、最初から国内法制度や福祉現場の実情を前提に設計された国内サービスを選ぶという考え方も有力です。Hope Care AIは障がい福祉・介護事業所向けに設計されており、セキュリティのページや制度対応のページで、国内の制度・法令を踏まえた設計方針を確認できます。
海外製の生成AIサービスにはコストや機能面での魅力がある一方、法的な論点を事業所側できちんと整理しておく必要があります。導入前にチェックリストを作り、契約書を丁寧に確認する手間を惜しまないことが、後々のトラブルを防ぐ最も確実な方法です。
監修
株式会社オルデンティアコーポレーション 福祉DXコンサルタント
福祉施設のDX・生成AI活用を専門に支援。本記事は現場の実務課題に基づき執筆・監修しています。