最近、利用している事業所や施設で「生成AI」という言葉を耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。「AIが記録をしているの?」「自分の情報は大丈夫なの?」と不安に思われる方もいると思います。この記事では、専門的な言葉をできるだけ使わずに、事業所が生成AIを使う理由と、利用者・ご家族が知っておくとよいことをやさしくご説明します。
生成AIとは、かんたんに言うとどんなもの?
生成AIとは、文章や画像などを自動でつくることができるコンピューターの技術です。たとえば、職員がその日の様子をメモした短い言葉をもとに、読みやすい報告文の下書きを作ってくれたりします。パソコンやスマートフォンの中で動くプログラムのようなものだとイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。
なぜ事業所は生成AIを使うの?
事業所の職員は、利用者の方への支援だけでなく、日々の記録や報告書などの書類づくりにも多くの時間を使っています。生成AIを使うことで、こうした書類づくりの時間を少し短くし、その分を利用者の方との関わりに使えるようにすることが主な目的です。
- 記録や報告書の下書きづくりにかかる時間を減らす
- 職員が利用者と向き合う時間を増やす
- 読みやすく分かりやすい文章にととのえる
生成AIが作った文章は、そのまま使われるのではなく、必ず職員が内容を確認してから記録として使われます。「AIにすべてお任せ」ということではありません。
よくある質問
ここでは、利用者やご家族から寄せられることが多い質問にお答えします。
Q. 私の個人的な情報は大丈夫ですか?
事業所が生成AIを使う場合、個人情報の取り扱いについては通常のパソコンでの記録と同じように、法律やルールに基づいて慎重に管理されます。心配な点がある場合は、遠慮なく事業所の担当者に直接お尋ねいただくのがよいでしょう。
Q. 支援の内容がAIまかせになってしまうのでは?
いいえ、支援そのものを決めたり行ったりするのは、これまでどおり職員です。生成AIは、あくまで記録や書類づくりの「お手伝い」をする道具であり、利用者への関わり方や支援の方針をAIが決めることはありません。
Q. AIを使うことで職員が減らされてしまうのでは?
生成AIの目的は、職員の書類作成の負担を減らし、利用者への支援によりしっかりと時間を使えるようにすることです。職員の代わりになるものではなく、職員を支える道具という位置づけで導入が進められています。
Q. 使いたくない場合、断ることはできますか?
生成AIは主に職員の内部的な業務のために使われるものであり、利用者の方が個別に使用の可否を選ぶという性質のものではないことが一般的です。ただし、記録の取り扱いについて気になることがあれば、事業所に相談することができます。
事業所によって生成AIの使い方や範囲は異なります。気になることがあれば、専門的な説明を求めるのではなく、まずは普段お世話になっている職員に「どんなふうに使っているのですか」と聞いてみることをおすすめします。
Q. AIが作った文章はどのくらい正確なのですか?
生成AIは、渡された情報をもとに自然な文章を組み立てることは得意ですが、内容の正しさを保証するものではありません。そのため、事業所では「AIが作った文章=完成品」として扱うのではなく、必ず職員が事実と照らし合わせて確認したうえで使う、というルールを設けているところがほとんどです。安心してご利用いただくために、こうした確認の手順があることを知っておいていただければと思います。
Q. どうして最近になって生成AIを使う事業所が増えているのですか?
福祉の現場では、支援を必要とする方が増える一方で、支援員の数を急に増やすことは簡単ではありません。限られた人数の職員で、これまでと同じかそれ以上に丁寧な支援を続けるための工夫のひとつとして、書類作成を助ける生成AIが注目されるようになってきました。決して職員の代わりに支援を行わせるためのものではなく、あくまで「書類づくりのお手伝い」としての活用が中心です。
Q. 事業所からのお便りやお知らせも、AIが作っているのですか?
事業所によっては、季節の行事案内や日々の活動報告といったお便りの文章づくりに、生成AIを一部活用している場合もあります。もっとも、内容の企画や写真の選定、実際に何を伝えたいかという判断は職員が行っており、AIはあくまで文章を整える補助として使われることがほとんどです。気になる場合は、いつも通り担当の職員に聞いてみてください。
Q. 生成AIを使うと、これまでより支援員との関わる時間が減ってしまいますか?
むしろ逆の効果が期待されています。書類作成にかかっていた時間が短縮されれば、その分を利用者の方との会話や見守りの時間に充てやすくなるというのが、多くの事業所が生成AIを導入する狙いです。実際にどの程度時間に余裕が生まれるかは事業所ごとに差がありますが、「支援員がAIに時間を取られて、利用者と関わる時間が減る」という方向にはならないよう、事業所側でも工夫をしながら運用しています。
Q. AIが作った記録に、もし間違いがあったらどうなりますか?
生成AIが作った文章の下書きに事実と異なる内容が紛れ込んでしまう可能性はゼロではありません。だからこそ、多くの事業所では、AIが作った文章を職員が必ず読み返し、内容を確認したうえで正式な記録として確定させるという手順を踏んでいます。もし記録の内容について疑問や誤りに気づいた場合は、遠慮なく事業所に伝えていただければ、確認・訂正の対応をしてもらえるはずです。
Q. きょうだいや親戚にも、事業所がAIを使っていることを伝えたほうがよいですか?
特に義務ではありませんが、ご家族の中でサービスの利用に関わる方が複数いらっしゃる場合は、事業所の取り組みについて共有しておくと、後から疑問が生じた際にも安心して相談しやすくなります。難しく考えず、「記録づくりに便利な道具を使っているみたい」という程度の共有でも十分です。詳しく知りたい場合は、一緒に事業所に確認してみるのもよいでしょう。
Q. 職員がAIの操作に慣れていなくて、かえって時間がかかっているように見えるのですが。
新しい道具を使い始めた直後は、操作に慣れるまで多少時間がかかることがあります。多くの事業所では、導入後しばらくの間は職員研修の期間を設けており、この時期は一時的に作業に時間がかかることもあります。長い目で見れば業務の効率化につながることを目指して取り組んでいますので、しばらくは温かく見守っていただけますと幸いです。気になる場合は、事業所に直接状況を尋ねてみるのもよいでしょう。
Q. AIという言葉を聞くと少し怖い印象があります。どう捉えればよいですか?
「AI」という言葉から、ロボットが人の代わりに判断をするようなイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、福祉の現場で使われている生成AIは、あくまで文章の下書きを作る「文房具」のような道具です。人の気持ちを汲み取ったり、支援の方針を決めたりするのは、これまでどおり職員自身です。過度に心配しすぎず、「書類づくりを手伝う便利な道具」という程度に捉えていただくとよいかもしれません。
Q. 事業所を選ぶときに、生成AIを使っているかどうかを気にした方がよいですか?
生成AIやICTを使っているかどうかは、事業所を選ぶうえで最も重視すべき点ではありません。それよりも大切なのは、職員が利用者一人ひとりに丁寧に向き合ってくれるか、困ったときに相談しやすい雰囲気があるかといった点です。生成AIはあくまで職員の書類作成を支える道具のひとつであり、その有無だけで支援の質が決まるわけではないことを知っておいていただければと思います。
Q. 生成AIを使うことで、これまでと何か変わることはありますか?
基本的に、利用者やご家族から見て日々の関わり方が大きく変わることはないと考えられます。変化があるとすれば、職員が書類作成に取られていた時間の一部が、利用者への対応や相談に使えるようになるといった、間接的な良い変化が期待される点です。もし何か気になる変化に気づいた場合は、遠慮なく事業所に尋ねてみてください。
ご家族が事業所とのやり取りで心がけたいこと
生成AIの活用についてご不安な点があれば、遠慮なく事業所に質問していただいて構いません。以下のような聞き方をすると、より具体的な説明を受けやすくなります。
- 「どんな場面でAIを使っているのですか」と具体的な場面を尋ねる
- 「私や家族の個人的な情報はどう扱われますか」と個人情報の扱いを確認する
- 「最終的に内容を確認しているのはどなたですか」と責任の所在を確認する
事業所によっては、生成AIの利用状況について家族向けの説明資料やお便りを用意しているところもあります。気になる場合は、そうした資料がないか尋ねてみるのもよい方法です。
これからのために知っておきたいこと
生成AIは今後、多くの福祉の現場で少しずつ使われるようになっていくと考えられます。大切なのは、AIが便利な道具として使われつつも、利用者の方への丁寧な関わりという福祉の基本が変わらないことです。事業所を選ぶ際や日々の関わりの中で、気になることがあれば遠慮なく質問し、納得したうえで安心して利用していただければと思います。
監修
株式会社オルデンティアコーポレーション 福祉DXコンサルタント
福祉施設のDX・生成AI活用を専門に支援。本記事は現場の実務課題に基づき執筆・監修しています。