生成AIに業務記録や相談内容を入力する際、「そのまま入力していいのか」「どこまで書き換えれば安全なのか」で迷う職員は少なくありません。匿名化は一度覚えれば習慣化できる作業です。ここでは、実際に生成AIへ入力する前に行う匿名化の手順を、ステップ形式で具体的に解説します。
ステップ1:入力しようとしている情報を洗い出す
まず、これから生成AIに入力しようとしている文章の中に、どのような個人情報・要配慮個人情報が含まれているかを確認します。氏名、生年月日、住所、家族構成、障がいの種別や程度、既往歴、支援計画の詳細な経過などが典型例です。「相談内容の要約を作りたいだけだから大丈夫」と思っていても、元の文章に具体的な固有名詞が残っていることは意外と多くあります。
ステップ2:直接的な識別子を置き換える
氏名は「利用者A」「Bさん」のような記号に、生年月日は「〇〇代」といった年代表現に、住所は市区町村レベル以上の粗い表現に置き換えます。事業所名や担当職員名も、必要がなければ「当該事業所」「担当職員」といった一般的な表現にとどめます。
| 元の情報 | 匿名化後の表現例 |
|---|---|
| 山田花子さん(32歳) | 利用者A(30代) |
| 東京都〇〇区〇〇町1-2-3在住 | 都内在住 |
| 統合失調症で通院中 | 精神疾患により通院中(相談の目的上必要な場合のみ) |
| 担当職員:鈴木太郎 | 担当職員 |
ステップ3:組み合わせによる特定リスクを確認する
個々の情報を匿名化しても、複数の情報を組み合わせることで個人が特定できてしまう場合があります。例えば「30代・東京都内・特定の稀少疾患・特定の就労支援事業所を利用」という条件が重なると、関係者であれば個人を推測できてしまうことがあります。単発の置き換えだけでなく、文章全体を読み直して「この情報だけで誰か分かってしまわないか」を確認する工程が欠かせません。
匿名化したつもりでも、事業所内の少人数のコミュニティでは「その特徴だけで誰か分かってしまう」ケースがあります。特に小規模事業所や、利用者数の少ない地域のサービスでは、一般的な匿名化基準よりも一段階粗い表現にする配慮が必要です。
ステップ4:目的に照らして必要最小限に削る
匿名化は「個人が分からなければ何でも書いてよい」という意味ではありません。生成AIに相談したい内容(例えば「制度上の解釈を知りたい」「文章表現を整えたい」)に対して、本当に必要な情報だけを残し、それ以外は思い切って削除します。情報を削っても目的が達成できるかを都度確認する習慣をつけると、自然と入力内容がスリムになっていきます。
ステップ5:入力前にもう一度読み返す
- 固有名詞(氏名・地名・施設名)が残っていないか
- 日付が特定の出来事を推測させる形になっていないか
- 複数の属性の組み合わせで個人が推測できないか
- そもそもその情報を入力する必要が本当にあるか
この5つを確認するだけでも、入力前チェックの精度は大きく上がります。慣れてくると、記録を作成する段階から「後で匿名化しやすい書き方」を意識できるようになり、二度手間が減ります。
ステップ6:組織としてルール化し、繰り返し確認する
匿名化の手順は、個人の判断力に頼るだけでなく、事業所内でチェックリストやテンプレートとして共有しておくと定着しやすくなります。新人職員にも同じ基準で運用してもらうために、簡単な事例集を作っておくのも有効です。なお、どこまでの加工が「十分な匿名化」といえるかは情報の性質や利用目的によって異なるため、判断に迷う場合は個人情報保護の専門家に確認することをおすすめします。
生成AI活用における入力ルールの設計については特長やセキュリティのページもあわせてご覧ください。
匿名化は面倒に感じられる作業かもしれませんが、慣れれば数十秒でできる習慣です。事業所全体でこの手順を共有し、日々の業務に無理なく組み込んでいくことが、安心して生成AIを活用し続けるための近道になります。
監修
株式会社オルデンティアコーポレーション 福祉DXコンサルタント
福祉施設のDX・生成AI活用を専門に支援。本記事は現場の実務課題に基づき執筆・監修しています。
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