障がい福祉サービスの現場では、利用者本人だけでなく、家族や成年後見人への情報提供が日常的に発生します。日々の様子を伝える連絡帳、支援計画の共有、体調急変時の報告――こうしたやり取りに生成AIを使って文章を作成する事業所が増えていますが、「誰に」「どこまで」情報を出してよいかの線引きは、実は個人情報保護法上も重要な論点です。
Q1. 家族への情報提供は本人同意なしでできる?
結論から言うと、原則として本人(利用者)の同意なく家族に個人情報を提供することは、第三者提供にあたる可能性があります。ただし、障がいの特性上、本人が同意の意思表示を行うことが難しいケースも多く、その場合は「本人の利益のために必要」という個別事情を踏まえた判断が必要になります。特に生成AIで作成した報告書やサマリーを家族に送る場合、AIが要約する過程で本人が想定していない情報(通院歴、服薬状況、他利用者との関係性など)まで含んでしまうリスクがある点に注意が必要です。
Q2. 成年後見人への情報提供はどう違う?
成年後見人は法律上、本人の財産管理や身上監護に関する代理権を持つため、その職務遂行に必要な範囲では、本人の同意がなくても情報提供が認められると解されることが一般的です。ただし「必要な範囲」を超えた情報(例えば他利用者に関する情報や、支援員個人の評価コメントなど)まで開示することは避けるべきです。生成AIに後見人向け報告書を作成させる際は、プロンプトの時点で「本人に関する情報のみを対象とし、他利用者や職員個人の情報は含めない」よう明示することが実務上有効です。
生成AIに要約や報告書のドラフトを作らせる際は、「提供先」を明確にプロンプトに含めることが有効です。例えば「この文章は成年後見人向けです。財産管理・身上監護に関係する情報のみを含めてください」と指示することで、不要な情報の混入を減らせます。ただし最終的な内容確認は必ず人の目で行い、AI任せにしないことが重要です。
Q3. 家族間で意見が対立している場合は?
複数の家族(親、兄弟姉妹など)が関与し、意見の対立がある事例も少なくありません。この場合、誰が「正当な受領権限を持つ者」かを事業所側で慎重に見極める必要があります。生成AIが自動生成した文章を、権限のない家族にまで一律送信してしまうといった運用上のミスが起きないよう、情報提供先のリストは人が管理し、AIはあくまで文面作成の補助に留めるという役割分担が望ましいでしょう。
情報提供の可否を整理するチェックリスト
- 提供先は本人の同意を得ている家族か、法定代理権を持つ後見人か
- 提供する情報の範囲は、目的(身上監護・財産管理・緊急連絡)に照らして必要最小限か
- 他利用者や職員個人に関する情報が混入していないか
- AIが生成した文面を人が最終確認したか
- 提供記録(誰に・いつ・何を提供したか)を残しているか
NG例とOK例
| ケース | NG例 | OK例 |
|---|---|---|
| 連絡帳の家族共有 | AIに丸ごと生成させ未確認で送信 | AIで下書き→職員が個人情報の過不足を確認して送信 |
| 後見人への報告 | 他利用者とのトラブル詳細まで記載 | 本人の身上監護に関わる範囲のみ記載 |
| 家族間の対立 | 依頼があれば誰にでも同じ情報を送る | 提供先の権限を事業所側で確認してから送付 |
生成AIツールの中には、入力した情報を学習データとして利用する設定になっているものもあります。家族・後見人とのやり取りに含まれる要配慮個人情報(病歴、障がいの状況など)を外部の汎用AIサービスにそのまま入力することは避け、法人契約でデータの取り扱いが明確なツールを選ぶことが望ましいです。
Hope Care AIのような障がい福祉事業所向けに設計されたシステムでは、情報提供先ごとのアクセス権限管理や、入力データの取り扱いポリシーが明確化されているため、こうしたリスクを軽減しやすくなります。
Q4. 判断に迷ったらどうする?
家族・後見人への情報提供の可否は、個別の事情(本人の判断能力、家族関係、緊急性など)によって大きく変わります。事業所内でルールを定めておくと同時に、判断に迷うケースについては顧問弁護士や自治体の窓口、個人情報保護委員会の相談窓口などに確認することが望ましいです。生成AIはあくまで文章作成や情報整理を効率化するツールであり、提供の可否そのものを判断する主体ではないという位置づけを、職員全体で共有しておくことが安全な運用の第一歩になります。
監修
株式会社オルデンティアコーポレーション 福祉DXコンサルタント
福祉施設のDX・生成AI活用を専門に支援。本記事は現場の実務課題に基づき執筆・監修しています。
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